山 行 報 告
2011/12/10〜11   富士山・雪上訓練    メンバ:新村、根来、大高ぁ、大高ゅ、田中、名屋、中島、小川 


大黒天で小休止 骨折部の固定 シートの準備 負傷者の移動 シート梱包@
シート梱包A 下方への搬送 1/3システムによる引上げ 滑落停止訓練 夜明け前の山中湖



【コースタイム】

(12月10日)
馬返駐車場(5:05)…二合目(5:56)…大黒天(6:51)…(7:45)テン場(星観荘前)(9:00)…訓練場所(六合目付近)(14:30)…テン場(泊)

(12月11日)
テン場(8:00)…訓練場所(六合目付近)(12:00)…(12:30) テン場(13:40)…三合目(14:05)…大黒天(14:23)…馬返駐車場(15:00)



【記 録】

(12月10日)
 駐車場確保のため道の駅で仮眠せず直接「馬返」まで行き、車内で仮眠をとる。4時に起床してヘッデンを点けて出発。鳥居が倒れそうなので迂回道がついている。

 二合目、大黒天と小休止をとり五合目の道路に出ると、とたんに風が強くなる。六角堂をテン場にしようとしていたが、水用の雪の確保が難しそうなのと、佐藤小屋のトイレがきれいなので佐藤小屋の一段上の小屋前にテントを張る。

 湯を沸かし、お茶を飲んでテルモスに暖かい飲み物を満たして出発。頂上付近は猛烈な雪煙が舞っているので、あまり上方に行くと危険なため六合目付近で、シート搬送と引上げシステムの訓練を行うことにする。

 六合小屋から五合目駐車場への登山道で、訓練を実施する。シート搬送では「大高さんが右足骨折」を前提として、副木を当てツェルトで梱包し五合目駐車場方面に向って搬送を開始する。

 しかし、なだらかな傾斜のため滑らないので引っ張らねばならないが、1人では無理なので2人で引っ張る。露岩のところは身体の下に通したスリングで持ち上げて搬送。100mほど下り今度は元の位置まで引上げる。引っ張り用のスリングを肩に掛けていたが、腰がつらくなるのでハーネスに繋げて引っ張る。

 元の位置に戻って今度は右側の急斜面を下す練習をする。怪我人のハーネスには更に念を入れてバックアップ用のロープを繋いで斜面を下す。雪が少なく支点になりそうなものが無いので、やむを得ずシェルターの柱を使用する。

 10mほど降ろしたあと、三分の一システムで引上げ練習をするが、力が弱いと1人では引き上げられないことが判った。また、長時間梱包されていると寒さが身にしみてくるようで大高さんは震えていた。

 シート梱包する前にレスキューシートなどで包み保温を図る必要がある。また、生理現象が起きた場合にどう対処するかも考えておく必要があろう。

 とにかく、実際に行ってみると想定外のことが起きるので、大いに考えさせられた。またシート搬送の場合、同行の人数が少ない場合は他のグループに助力依頼し、少しでも多くの人数で搬送するようにせねばならないと感じた。

反省点:シートが弛んでいて搬送中に少し緩んできた。膝を少し曲げた状態にしなかった。(搬送される者は背中が痛くなったようである。)

(12月11日)
 昨日シート搬送の訓練をした少し先の斜面で滑落停止と支点作成、確保練習をする。

 小沢の斜面で急斜面ではあるが、下は擂鉢の底状になっているため安全ではあるが、更にロープを張り雪を積み上げて安全を確保する。斜面はカリカリにクラストしており、斜面の上に立つとかなり怖い。

 滑落停止の練習してみたが雪面が固くピックがうまく刺さらず、斜めなり雪面をピックが滑り失敗してしまう。ザックを背負って練習しても何回かのうち1回は止められても、確実には止められない事が判った。

 クラストした場所ではバランスを崩した時に、如何にして体勢を立て直すかが最も必要なことであろう。全員が滑落停止訓練をしたが、誰も100%止められる者はいなかった。しかし、万一バランスを崩して滑りだしてた場合にもあきらめることなく停止姿勢を取らねばならないのであろう。

 デッドマンやスノーボラートの支点作り、スタンディングアックスビレイ、ヒマコン2の訓練をした。ヒマコン2はシステム構築は簡単でほぼ滑落を止められることが判ったが、今後はコンテで行動中に相方が不意に滑落するなど、現実にありうるスタイルで訓練する必要があると考える。

 ヒマコン2において、エイト環とカラビナの組み合わせによっては、全く制動が効かなくなるので注意を要する。カラビナはD型のような物よりもオーバルあるいは平なような形で、エイト環の輪の部分からカラビナの一部がはみ出ないほうが良い。(カラビナは2個使用すべし、との指摘が酒井さんからありました。)

 最後に日当たりの良い場所で、小川さんからタイトロープ、ショートロープについて説明を受けた。

 今回の雪訓は風が強くて六合目付近でしか訓練できなかったが、得る事が沢山あり大変有意義であった。また外人らしい遭難者遺体が見つかったり、夜になっても帰ることができず七合目小屋に逃げ込んだ学生が出たりと、想定外の事があって印象に残った。
                                       【記録:根来】


12月10日(土)
 大高さんと祐美さんの車に分乗し、馬返しに到着。仮眠してヘッ電行動開始。汗にぬれた髪が凍り始めた頃、佐藤小屋に到着。テントは星観荘の前に張ることにする。すぐ下の佐藤小屋で水は買えるし、暖房便座のトイレは使えるし、快適だ。

 アイゼンをつけて6合目まで行く。雪が少ないので今日はシート搬送からやってみることにする。 シェルターを過ぎたところで、大高さんに負傷者役をやっていただき、シート梱包を始める。

 梱包した後は、下り、登り、ともにシート搬送してみる。実際にやってみると、どちらも前を引っ張るのにかなりの力を使い、3人でも厳しい。

 つづいてシェルターの柱を支点にして3分の1引き上げをやってみる。まずは、別の支点でバックアップをとりながら、大高さんをロープで下ろす。次に、バックアップを仮固定しておき、引き上げシステムの構築に入る。最後は祐美さんに確認してもらい、引き上げ開始。

 寒さに震えるまで負傷者役をやってくださった大高さん、有難うございました。休憩後、順番に引き上げシステムの練習をする。見ているのとやってみるのは大違いで、本番で間違えないためにも練習させてもらってよかった。

12月11日(日)
 今日はシェルターからもう少し進んだところで滑落停止の練習。うまく停止できなくてもケガをしないように、スコップで雪を掘り起こし、スノーバーを支点にフィックスロープを張って準備OK。

 クラストした斜面を少し上がると、もう恐い。低いところで心も身体も準備して臨むが、ピックが雪面にうまく刺さらず止まらない。名屋さんに見てもらい、何度か練習する。確実に止めるためにも恐怖を克服するためにも、もっともっと練習が必要だ。

 つづいて、ロープを使った確保の練習。まずは、デッドマンやスノーボラードで支点を作ってみる。スノーボラードに直接ロープをかける場合は、スノーボラードとロープの間に小枝などをはさむと強度が出せる。荷重をかけていくと小枝をはさまなかった箇所から崩壊した。

 つづいて、スタンディングアックスビレイとコンテ時のヒマコン2を練習する。積雪が少なくてピッケルのシャフトは刺せなかったので、小川さんのバイルを借りて試してみた。

 テントを撤収し駐車場へ。皆、下るのが早くてとっとこ下りていった。二日間快晴の富士山だったが、山頂は常に雪煙が舞っていた。学生、単独行者、何名か遭難者も出ていたようで、冬の富士山は甘くない。いつか山頂に立ってみたい。
                                       【新村 記】